プラモの泉

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【9種類を比較】模型用溶剤がゴムパッキンに与えるダメージを徹底検証

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皆さんこんにちは、ajiroです。

今回は9種類の模型用溶剤にゴムパッキンを漬けて、直径の変化を測定したので、その結果をお知らせします。

 

 

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はじめに

先日クレオスのブログを見ていると、エアブラシのドブ漬けの危険性を示すために、Oリングを各種溶剤に浸して直径を測定する記事を発見しました。

gsicreoshobby.blogspot.com

 

非常に興味深い記事ですが、実験に使用された溶剤は4種類だけでした。

私は他の溶剤の結果も気になったので、9種類の溶剤にOリングを浸して、浸漬時間におけるOリングの直径の変化を観察することにしました。

実験方法

大きさの違う2種類のゴムパッキンを各種溶剤に漬け込んで、時間による直径の変化を測定します。

ゴムパッキン

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ゴムパッキンは水道の補修用Oリングを使用しました。材質は広く使われるNBRです。

Oリングの直径は大きい方は13.6㎜、小さい方は6.6㎜ですが、私の持っているものさしの最小目盛は0.5㎜です。そこで、今回の実験では大きい方を13.5㎜、小さい方を6.5㎜として扱うことにします。

溶剤

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使用する溶剤は以下の9種類です。比較用に精製水も用意しました。

  1. Mr.ツールクリーナー
  2. ツールクリーナーNEXT
  3. ガイアカラーうすめ液
  4. Mr.カラーうすめ液
  5. アクリジョンツールクリーナー
  6. タミヤエナメル溶剤
  7. 水性ホビーカラーうすめ液
  8. イソプロピルアルコール(※)
  9. マジックリン
  10. 精製水

※ガソリンタンク水抜き剤の成分はイロプロピルアルコール(イソプロパノール)です。これは安価でツールクリーナーより臭いが弱く、水性ホビーカラーうすめ液より塗料をよく溶かすので、塗装用具の洗浄やパーツの脱脂に使用しています。

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各種溶剤を入れた空き瓶の中に、2種類のゴムパッキンを漬け込みます。

その後10分・30分・1時間・2時間・3時間・6時間・12時間経過するごとに、パッキンを取り出してそれぞれの直径を測定します。

 

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結果

Mr.ツールクリーナー

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Mr.ツールクリーナー(パッキン大)

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Mr.ツールクリーナー(パッキン小)

Mr.ツールクリーナーに漬けた場合、大パッキン、小パッキン共に10分後から膨張を確認できました。

12時間後に大パッキンは17.5㎜、小パッキンは8.0㎜に膨張しました。

 

ツールクリーナーNEXT

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ツールクリーナーNEXT(パッキン大)

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ツールクリーナーNEXT(パッキン小)

ツールクリーナーNEXTに漬けた場合、大パッキンは10分後、小パッキンは30分後に膨張を確認できました。

12時間後に大パッキンは15.5㎜、小パッキンは7.5㎜に膨張しました。

 

ガイアカラーうすめ液

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ガイアカラーうすめ液(パッキン大)

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ガイアカラーうすめ液(パッキン小)

ガイアカラーうすめ液に漬けた場合、大パッキンは30分後、小パッキンは1時間後に膨張を確認できました。

12時間後に大パッキンは15.0㎜、小パッキンは7.5㎜に膨張しました。

 

Mr.カラーうすめ液

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Mr.カラーうすめ液(パッキン大)

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Mr.カラーうすめ液(パッキン小)

Mr.カラーうすめ液に漬けた場合、大パッキンは30分後、小パッキンは1時間後に膨張を確認できました。

12時間後に大パッキンは15.0㎜、小パッキンは7.0㎜に膨張しました。

 

アクリジョンツールクリーナー

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アクリジョンツールクリーナー(パッキン大)

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アクリジョンツールクリーナー(パッキン小)

アクリジョンツールクリーナーに漬けた場合、大パッキンは10分後、小パッキンは1時間後に膨張を確認できました。

12時間後に大パッキンは15.5㎜、小パッキンは7.5㎜に膨張しました。

タミヤエナメル溶剤

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タミヤエナメル溶剤(パッキン大)

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タミヤエナメル溶剤(パッキン小)

タミヤエナメル溶剤に漬けた場合、パッキンの直径に目立った変化は確認できませんでした。

大パッキンの直径は、12時間後に若干膨張したように見えました。

 

水性ホビーカラーうすめ液

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水性ホビーカラーうすめ液(パッキン大)

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水性ホビーカラーうすめ液(パッキン小)

水性ホビーカラーうすめ液に漬けた場合、パッキンの直径に目立った変化は確認できませんでした。

大パッキンの直径は、12時間後に若干膨張したように見えました。

 

イソプロピルアルコール

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イソプロピルアルコール(パッキン大)

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イソプロピルアルコール(パッキン小)

イソプロピルアルコールに漬けた場合、パッキンの直径に目立った変化は確認できませんでした。

大パッキンの直径は、12時間後に若干膨張したように見えました。

 

マジックリン

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マジックリン(パッキン大)

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マジックリン(パッキン小)

マジックリンに漬けた場合、パッキンの直径に目立った変化は確認できませんでした。

 

精製水

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精製水(パッキン大)

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精製水(パッキン小)

精製水に漬けた場合、パッキンの直径に目立った変化は確認できませんでした。

 

結果まとめ

影響の大きい溶剤に注目して、浸漬時間と直径の関係を表にまとめました。

 

表.1 浸漬時間と大パッキンの直径 (mm)

  10分 30分 1時間 2時間 3時間 6時間 12時間
Mr.ツールクリーナー 14.5 15.5 16.0 16.0 16.5 17.0 17.5
ツールクリーナーNEXT 14.0 14.5 15.0 15.5 15.5 15.5 15.5
ガイアカラーうすめ液 13.5 14.0 14.0 14.5 14.5 15.0 15.0
Mr.カラーうすめ液 13.5 14.0 14.0 14.0 14.5 15.0 15.0
アクリジョンツールクリーナー 14.0 14.0 14.0 14.5 14.5 15.5 15.5



表.2 浸漬時間と小パッキンの直径 (mm)

  10分 30分 1時間 2時間 3時間 6時間 12時間
Mr.ツールクリーナー 7.0 7.5 7.5 8.0 8.0 8.0 8.0
ツールクリーナーNEXT 6.5 7.0 7.0 7.5 7.5 7.5 7.5
ガイアカラーうすめ液 6.5 6.5 7.0 7.0 7.0 7.0 7.5
Mr.カラーうすめ液 6.5 6.5 7.0 7.0 7.0 7.0 7.0
アクリジョンツールクリーナー 6.5 6.5 7.0 7.0 7.0 7.5 7.5

 

表を基に各溶剤とパッキン径の増分を、グラフにしました。横軸は浸漬時間、縦軸はパッキン径の増分です。

分かりやすいように対数関数のトレンドラインを引きました。

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各溶剤とパッキン径の増分(パッキン大)

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各溶剤とパッキン径の増分(パッキン小)

 

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まとめ

今回は9種類の溶剤と、精製水にゴムパッキンを漬けて直径の変化を測定しました。

その結果、以下の5種類の溶剤に浸した場合にゴムパッキンの膨張を確認できました。

  • Mr.ツールクリーナー
  • ツールクリーナーNEXT
  • ガイアカラーうすめ液
  • Mr.カラーうすめ液
  • アクリジョンツールクリーナー

 

ゴムパッキンに与えるダメージを不等号で表すと、以下のようになります。

Mr.ツールクリーナー>>ツールクリーナーNEXT>アクリジョンツールクリーナー>ガイアカラーうすめ液>Mr.カラーうすめ液

 

以下の4種類の溶剤と精製水に浸した場合は、パッキンに目立った膨張は確認できませんでした。

  • タミヤエナメル溶剤
  • 水性ホビーカラーうすめ液
  • イソプロピルアルコール
  • マジックリン

しかしながら、タミヤエナメル溶剤、水性ホビーカラーうすめ液、イソプロピルアルコールに大パッキンを12時間浸した場合は、パッキンが若干膨張しているように感じました。

 

Mr.ツールクリーナーについて

ある程度予想はしていましたが、今回の実験でMr.ツールクリーナーはとても強力な溶剤で、ゴムパッキンへのダメージも大きいことが確認できました。パッキンを10分漬けただけでも膨張したので、エアブラシをこの溶剤に漬け込むことは絶対に推奨できません。

ニードルパッキンが溶剤に強いテフロン製のエアブラシを使う場合は、そこまで気を使わなくていいかもしれませんが、ニードルパッキンがゴム製のエアブラシの場合は、普段の洗浄はラッカー系のうすめ液で行い、汚れがひどいときだけツールクリーナーを使った方がいいと思います。

 

ツールクリーナーNEXTについて

Mr.ツールクリーナーより臭いが少ないツールクリーナーNEXTは、臭いと同様にパッキンに与えるダメージもマイルドでした。

この溶剤は購入したばかりで、未だ本格的に使用したことはありませんが、洗浄力次第ではかなり活躍してくれそうです。

 

ラッカー系うすめ液について

ガイアカラーうすめ液は、Mr.カラーうすめ液より強い溶剤を使用しているので、パッキンに与えるダメージはガイアの方が大きいようです。しかし、大きな差ではなかったので、それほど気にしなくていいと思います。

 

アクリジョンツールクリーナーについて

アクリジョンツールクリーナーはラッカー系のうすめ液より臭いが少ないので、パッキンへのダメージも大きくないと予想していましたが、そんなことはありませんでした。

余談ですが、アクリジョンツールクリーナーはクレオス公式よりMr.カラーや水性ホビーカラーの洗浄にも使用できることがアナウンスされています。

 

 

臭いが少なく、ラッカー・水性・アクリジョンを落とせるので、パッキンのダメージが小さければかなり使えるクリーナーになるのではないかと期待していましたが、現実は甘くないようですね。

 

エナメル溶剤について

スチロール樹脂やABS樹脂を割ることで有名なエナメル溶剤ですが、ゴムパッキンへのダメージはほとんど確認できませんでした。

 

イソプロピルアルコールについて

イソプロピルアルコールは臭いが少なく水性塗料をよく溶かすので、私は水性ホビーカラーを使った後、この溶剤でエアブラシを洗浄しています。

今回の実験でパッキンに与えるダメージもほとんど確認できなかったので、今後も積極的に活用したいです。

 

マジックリンについて

今回の実験で、マジックリンはゴムパッキンにダメージを与えないことが分かりました。マジックリンは水性塗料をいとも簡単に落とすので、活用の幅が広がるかもしれません。

しかしながら、マジックリンは銅・真鍮・アルミを傷める恐れがあるのでエアブラシの洗浄には注意が必要です。

ajiromokei.com

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今回の実験を通して、やはりエアブラシを溶剤にドブ漬けすることはやめておいた方がいいと思いました。

エアブラシをうがい洗浄した後には、ニードルキャップを押さえてエアを逆流させて、内部を完全に乾燥させる作業を忘れないようにしたいです。